技術戦略マネジメントの要点とまちがえやすい点(ITパスポート試験 論点テキスト)
ITパスポート試験のストラテジ系(経営戦略)のうち、「技術戦略マネジメント」にあたる7論点を、要点48本・まちがえやすい点33本にまとめました。
最終更新:2026年10月6日
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このページの論点
技術開発戦略の立案・技術開発計画
技術経営・開発計画・技術予測
技術経営の考え方、技術ロードマップ、ステージゲート法、デルファイ法、技術のSカーブ、将来予測の考え方を扱う。
要点
- MOTは、技術に立脚する事業を営む組織が、技術開発投資を事業成果や社会価値の創出に結び付けることを目指すマネジメントの考え方である。
- 技術ロードマップは、将来必要となる技術や自社の技術開発計画を時間軸に沿って可視化し、経営戦略と技術開発の方向性を結び付けるための図表である。
- ステージゲート法は、研究開発のプロセスを段階に区切り、各段階の終了時に評価基準に基づいて継続・中止・修正等を判断する関門を設け、リスクを管理しながら進める手法である。
- デルファイ法は、複数の専門家に匿名のアンケートを反復実施し、集約結果をフィードバックしながら意見を収束させて将来の技術動向等を予測する手法である。
- 技術のSカーブは性能向上が時間の経過とともにS字型を描く考え方で、成熟期に性能向上が鈍化すると既存技術の限界が近づいているサインとされ、次世代技術への転換を検討する契機となる。
- バックキャスティングは、目指すべき将来像を先に描き、そこから逆算して現在の行動を検討する考え方である。
- フォアキャスティングは、現状のデータやトレンドを基に将来を予測する積み上げ型の考え方である。
- 技術ポートフォリオは、自社が持つ技術や開発中の技術を種類や成熟度などで整理し、技術開発への投資配分を考えるための分析。
- APIエコノミーは、企業が自社システムの機能やデータを外部へ公開し、他社のサービスとの連携で新たな価値や収益を生む仕組み。
まちがえやすい点
- フォアキャスティングは現状の延長で将来を予測するのに対し、バックキャスティングは望ましい将来像から逆算するため、両者は将来を考える起点が異なる。
- 技術のSカーブは性能向上がS字型を描く概念であり、株価の周期変動やPPM、稼働率の指標とは異なる。
- デルファイ法は匿名の専門家調査を反復する手法であり、株価予測の統計分析や単一の専門家の意見を絶対視する手法、売上実績に基づく予測ではない。
- MOTは経営と技術を統合する視点を持つ考え方であり、財務指標による判断やマーケティング活動への特化、5S活動などの現場改善手法とは別である。
- 技術ロードマップは技術開発計画を時間軸で可視化する図表であり、出張経路図や障害対応マニュアル、組織図とは目的も内容も異なる。
イノベーションの種類と製品構造
イノベーションのジレンマ、製品と工程の革新の違い、リバースイノベーション、両利きの経営、製品アーキテクチャを扱う。
要点
- イノベーションのジレンマとは、業界で優良とされる既存企業が既存顧客の要求に忠実に応えることに注力するあまり、破壊的技術革新への対応が遅れ、新興企業に市場での優位性を奪われる現象である。
- プロセスイノベーションは、製造工程や業務プロセスを効率化・高度化する技術革新である。
- プロダクトイノベーションは、新しい製品・サービス自体を生み出す技術革新である。
- リバースイノベーションは、新興国等のニーズに合わせて生み出された低コストでシンプルな製品・サービスが、後に先進国市場でも受け入れられ普及していく現象である。
- 両利きの経営は、既存事業を深掘りし効率化する知の深化と、新規事業の探索や新たな知見の獲得を目指す知の探索を、同一組織内でバランスよく両立させようとする考え方である。
- 技術のコモディティ化は、先進的であった技術が普及・標準化することで製品間の機能差が縮小し、価格競争が中心となっていく現象である。
- モジュール型アーキテクチャは、標準化されたインタフェースを介して部品を独立に組み合わせられる製品構造である。
- インテグラル型(擦り合わせ型)アーキテクチャは、部品間の相互調整を重視し、部品ごとの独立性が低い製品構造である。
まちがえやすい点
- プロダクトイノベーションは製品・サービスそのものを生む革新、プロセスイノベーションは工程を効率化する革新であり、両者は同一視する説明とは異なる。
- モジュール型とインテグラル型は同義語ではなく、部品の独立性と相互調整の重視という点で異なる製品構造である。
- リバースイノベーションは新興国発の製品が先進国へ普及する現象であり、先進国仕様のままの輸出や生産中止、特許の再出願手続ではない。
- 両利きの経営は知の深化と知の探索を同一組織内で両立させる考え方であり、従業員の利き手に関する人事方針や代表兼任体制、会計基準の並行使用とは別である。
- 技術のコモディティ化は機能差が縮小して価格が競争の中心になる現象であり、技術者の囲い込みや特許存続期間の延長制度、研究開発費の全額国庫補助制度とは異なる。
魔の川・死の谷・キャズムと普及過程
研究開発が事業として結実するまでの障壁と、新技術・新製品が普及する過程で現れる溝や期待の変化を扱う。
要点
- 魔の川は、研究開発の段階のうち、基礎研究から開発への移行の壁を表す比喩である。
- 死の谷とは、研究開発で生まれた技術やアイデアを実際の事業化・製品化に結び付ける段階で直面する、資金調達や体制構築などの大きな障壁を表す比喩である。
- ダーウィンの海は、事業化の後に市場で生き残るための競争の壁を表す比喩である。
- キャズム理論では、新技術・新製品の採用者層のうち、初期採用者層と多数派層との間に大きな溝があり、これを乗り越えられるかどうかが製品の本格的な普及の鍵になるとされる。
- ハイプサイクルは、新技術が黎明期・過度な期待のピーク期・幻滅期・啓発期・生産性の安定期の5段階を経て社会に普及していく過程を示した図表である。
まちがえやすい点
- 魔の川は基礎研究から開発への壁、死の谷は開発から事業化への壁であり、それぞれ障壁が現れる段階が異なる。
- ハイプサイクルは新技術への期待の推移を示す概念であり、プロダクトライフサイクルの別名や労働時間の推移とは別である。
- 死の谷は事業化・製品化段階の障壁を表す表現であり、製品衰退期の売上減少や企業の財務破綻、システム障害の復旧待ち時間とは異なる文脈で用いられる。
- キャズムは初期採用者層と多数派層の間の溝であり、統計的品質管理や給与評価モデル、資金調達手段の分類とは異なる。
知的財産戦略と特許の活用
特許ポートフォリオ、知的財産の使い分け、知財ミックス、クロスライセンス、特許マップ、先行技術調査を扱う。
要点
- 特許ポートフォリオ戦略は、自社が保有・出願する特許群を事業戦略の観点から整理・分析し、どの技術を権利化・活用・防衛していくかを検討する知的財産戦略の一つである。
- 知的財産戦略は、知的財産を特許等として権利化する、営業秘密として秘匿する、標準化を通じてオープンに普及させるなど状況に応じて使い分け、事業の競争力強化に結び付ける経営戦略である。
- 知財ミックス戦略は、特許権に限らず意匠権・商標権・営業秘密等の複数の知的財産権を製品や事業の性質に応じて組み合わせ、模倣困難性を高めて競争優位を強化しようとする考え方である。
- クロスライセンスは、互いに特許権等を保有する企業同士が実施権を相互に許諾し合う契約形態で、侵害紛争のリスクを避けつつ技術開発を進めやすくする狙いがある。
- 特許マップは、特許出願データを技術分野や出願人、時系列等の切り口で整理・可視化した資料であり、競合の研究開発動向の把握や手薄な技術領域の発見に活用される。
- 先行技術調査は、開発や出願に先立って既存の特許文献等を調査し、同一・類似の技術の有無を確認する取り組みであり、重複開発の防止や新規性・進歩性の見極めに役立つ。
- 特許戦略は、自社の技術を特許で保護して競争優位を確保しつつ、ライセンスなどを使い、事業に生かす計画。
まちがえやすい点
- 知財ミックス戦略は特許権に限らず複数の権利を組み合わせる戦略であり、特許権に限定する説明や知財を取得せず公開する戦略とは異なる。
- クロスライセンスは実施権を相互に許諾し合う契約であり、一方的な無償譲渡や共同出資による新会社設立、特許を国際的に無効化する手続ではない。
- 特許マップは技術開発の動向を把握する資料であり、庁舎の部署配置図や株主構成の図示、存続期間満了技術の一覧とは別である。
- 先行技術調査は出願する発明の新規性・進歩性の見極めに役立つ調査であり、価格比較の市場調査や登録可能性に影響しないという説明とは異なる。
- 特許ポートフォリオ戦略は特許群の整理・分析による知的財産戦略であり、在庫管理や株式投資手法、人材のスキル一覧管理とは異なる文脈の取組みである。
オープンイノベーションと産学官連携
社外の技術を取り込むオープンイノベーションと、TLO・産業クラスター・産学官連携・コンソーシアムなどの連携の形態を扱う。
要点
- オープンイノベーションは、自社の内部資源だけに頼らず、社外の技術・アイデア・人材などを積極的に取り込み、あるいは自社の技術を外部に提供して、新たな価値創造を加速させようとする考え方である。
- オープン&クローズ戦略は、コア技術を秘匿するクローズ領域と、標準化・普及を狙って公開するオープン領域を使い分け、市場の拡大と自社の収益確保を両立させようとする考え方である。
- TLO(技術移転機関)は、大学等の研究成果を特許として権利化し、企業へのライセンス供与等によって実用化・事業化を仲介する機関であり、産学連携を推進する役割を担う。
- 産業クラスターは、特定の地域に関連企業・大学・研究機関等が集積し、情報交流や人材交流、競争と協調を通じてイノベーションを生み出しやすい環境を形成する状態や、それを促進する政策的な取り組みを指す。
- 産学官連携は、企業・大学等の研究機関・国や地方公共団体の三者が連携し、共同研究や技術移転、人材育成等を通じてイノベーションの創出や地域産業の振興を図る取り組みである。
- コンソーシアム型研究開発は、複数の企業・大学・研究機関等が共同で組織を作り、資金や人材、知見といった研究資源やリスクを分担しながら特定テーマの研究開発を進める形態である。
- リビングラボは、実際の生活の場に多様な関係者が参加し、ユーザーとともに製品・サービスを共創しながら実証実験や課題解決を行うオープンイノベーションの手法・場である。
まちがえやすい点
- オープンイノベーションは社外資源の活用を前提とする考え方であり、秘匿主義とは対照的で、オープンソースソフトウェアや社内会議の公開制度そのものを指す用語とは異なる。
- オープン&クローズ戦略はコア技術の秘匿と周辺の公開を使い分ける戦略であり、一方的に全公開する説明や閉鎖的に全秘匿する説明、就業規則の公開範囲ではない。
- TLOは大学等の研究成果を企業へ橋渡しする機関であり、企業技術を大学へ提供する機関とは方向が逆で、労働基準監督署の研修制度や特許審査の外部委託機関とも異なる。
- 産業クラスターは地域に関連主体が集積する状態であり、単一大企業による拠点統合や海外移転現象、株式保有の集中状態とは別である。
- コンソーシアム型研究開発は共同で組織を作る形態であり、単独企業で完結する体制や他社特許の無断流用とは異なる。
ベンチャー投資とスタートアップ支援
ベンチャーキャピタル、コーポレートベンチャーキャピタル、アクセラレータープログラム、ハッカソンの役割を扱う。
要点
- ベンチャーキャピタルは、高い成長が見込まれる未上場企業に出資し、株式公開などを通じて資金を回収して利益を得る投資会社である。
- CVCは、事業会社自身がベンチャー企業に出資する仕組みであり、財務リターンに加えて、出資先の技術やアイデアを取り込むオープンイノベーションの手段としても活用される。
- アクセラレータープログラムは、大企業や投資家等が一定期間スタートアップを支援し、メンタリングや資金提供、事業連携機会の提供等を通じて事業成長を後押しするプログラムである。
- ハッカソンは、エンジニアやデザイナー等が短期間集中的にチームを組み、アイデア創出からプロトタイプ制作までを行うイベントであり、企業が新規事業のアイデア発掘などを目的に主催することがある。
まちがえやすい点
- ベンチャーキャピタルは未上場企業へ出資して利益を得る投資会社であり、融資を行う銀行や補助金を出す公的機関とは仕組みが異なる。
- CVCは事業会社が出資する仕組みであり、公的融資制度や敵対的買収の手法、証券取引所の上場区分とは別である。
- ハッカソンは技術者がチームで開発を行うイベントであり、不正侵入を目的とした違法行為や株主総会の採決手続、量産前の品質検査工程とは異なる。
- アクセラレータープログラムはスタートアップの成長を支援する育成プログラムであり、自動車の性能試験や給与引き上げの人事施策、特許の早期審査制度ではない。
デザイン思考・リーン・PoCによる検証
デザイン思考のプロセス、リーンスタートアップ、MVP、PoCといった新規事業や新技術を小さく検証する手法を扱う。
要点
- デザイン思考は、利用者への共感や観察を通じて本質的な課題を発見し、アイデア創出・試作・検証を反復しながら革新的な解決策を導き出す問題解決の思考法である。
- デザイン思考の一連のプロセスは、ユーザーへの共感から始まり、課題定義・アイデア創出・プロトタイピング・テストという工程を繰り返すものである。
- リーンスタートアップは、必要最小限の製品を用いて構築・計測・学習のサイクルを素早く繰り返し、顧客の反応をもとに仮説検証やピボットを行いながら、無駄を抑えて新規事業を立ち上げる手法である。
- MVPは、顧客に価値を提供できる必要最小限の機能に絞った試作品であり、早期に市場投入して顧客の反応を検証し、製品の方向性を見極めるために用いられる。
- PoC(概念実証)は、新しい技術やアイデアが実際に効果を発揮するかを、本格的な開発・投資に着手する前に小規模な検証で確かめる取り組みであり、リスクを抑える手段として活用される。
- ペルソナ法は、商品の典型的な利用者を、年齢や職業、生活習慣まで具体的に設定した架空の人物像として描き、開発に生かす手法。
- PoVは、新しい技術や製品が、利用者や事業にとって実際に価値をもたらすかどうかを検証すること。
- ビジネスモデルキャンバスは、顧客セグメントや価値提案、収益の流れなど事業を構成する要素を、1枚の図に整理して表現する手法。
まちがえやすい点
- 完成品を作り込んでから世に出す進め方は、必要最小限の製品で早く試すリーンスタートアップとは異なり、需要がなかったときの損失が大きくなる。
- MVPは必要最小限の機能を備えた試作品であり、最終製品と同一の完成度を持つ試作品や、議決権のない株式、稼働率保証の契約条件とは異なる。
- PoCは本格投資の前に実現可能性を確かめる検証であり、完成後の最終受け入れ検査やソースコード公開の仕組み、議決権行使の手続ではない。
- リーンスタートアップは無駄を抑えて仮説検証を繰り返す手法であり、人員削減の経営手法や詳細な事業計画の完成を前提とする考え方、在庫積み増しの生産管理手法とは別である。
- デザイン思考は利用者への共感から課題解決を導く思考法であり、外観デザインを扱う美術的手法や会計処理、コード整形とは異なる。
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