システム戦略の要点とまちがえやすい点(ITパスポート試験 論点テキスト)
ITパスポート試験のストラテジ系(システム戦略)のうち、「システム戦略」にあたる8論点を、要点61本・まちがえやすい点27本にまとめました。
最終更新:2026年10月6日
このページの論点
- 情報システム戦略
- 業務プロセス
- ソリューションビジネス
- システム活用促進・評価
情報システム戦略
情報システム戦略と経営戦略の関係
情報システム戦略が経営戦略を実現する手段であること、全体最適化計画や情報システム部門の役割、策定・見直しの考え方を扱う。
要点
- 情報システム戦略は、経営戦略・事業戦略の実現を支援するために、情報システムをどのように整備・活用していくかの基本方針を定めるものである。
- 情報システム戦略は経営戦略の実現を支える手段であり、経営目標やビジネス戦略との整合性を保ちながら、環境変化に応じて見直される。
- 情報システム部門は、システムの企画・開発・運用・保守という技術面の役割に加え、経営戦略とIT戦略の橋渡し役として全社最適の視点でシステム活用を推進する。
- 全体最適化計画は、部門最適に陥りがちな業務・システムを全社的な視点で見直し、重複投資やデータの不整合等を解消して企業全体の効率性・整合性を高める取り組みである。
- 情報システム戦略は、経営戦略と整合させ、現状とあるべき姿の差を明らかにして施策を導くのが基本である。
- SoEは、顧客との関係強化や体験の向上を目的に、アプリやSNSなど顧客との接点で使われるシステム。
まちがえやすい点
- 情報システム戦略は経営戦略と整合させて策定・見直しを行うものであり、情報システム部門だけで独自に決定するものとは異なる。
- 技術的に新しい製品を先に決めて業務を合わせる進め方は経営目的と関係のない投資になりやすく、目的を先に置く立案とは別である。
- 全体最適化計画は全社的な整合性を目指す計画であり、一部門の効率最大化や個別最適の維持とは異なる。
EA・ITガバナンスとIT投資管理
EA・SOA・ITガバナンス・ITポートフォリオ・セキュリティガバナンス・IT資産管理など、全社でITを統制し投資を管理する枠組みを扱う。
要点
- EAは、組織の業務や情報システムをビジネス・データ・アプリケーション・テクノロジといった体系で整理し、全体最適の観点から標準化・最適化を図る設計手法・考え方である。
- SOAは、業務上の機能をサービスという独立した単位に分割し、それらを組み合わせて柔軟に情報システムを構築・変更できるようにする設計の考え方である。
- ITガバナンスは、経営陣が主体となってIT戦略を経営戦略と整合させ、IT投資の意思決定やリスク管理、投資対効果の評価等を組織的に統制する仕組みである。
- ITポートフォリオマネジメントは、複数のIT投資案件やシステムを一覧化し、リスク・リターンや戦略的重要度等の観点から評価・分類して、限られた経営資源を全社最適の視点で配分する管理手法である。
- セキュリティガバナンスは、経営レベルでセキュリティリスクを評価し、対策投資の判断や責任体制の整備を行う考え方であり、情報システム戦略に組み込む。
- IT資産管理は、ハードウェアやソフトウェアライセンス等のIT資産を導入から廃棄まで一元的に把握・管理し、コストの適正化やライセンス違反の防止、セキュリティリスクの低減を図る取り組みである。
まちがえやすい点
- SOAは機能を独立したサービスに分割して組み合わせる考え方であり、単一の巨大プログラムとして一体開発する考え方とは異なる。
- セキュリティガバナンスは経営レベルで取り組むものであり、現場技術者だけで検討すればよいという考え方ではない。
- ITガバナンスは経営レベルの統制活動であり、単なる現場の技術的な取り組みやコーディング規約を指すものとは異なる。
DX推進と国の制度・指針
DXの定義と、デジタイゼーションとの違い、DX認定制度やデジタルガバナンス・コードといった国の制度・指針を扱う。
要点
- DXは、データとデジタル技術を活用して、製品・サービスやビジネスモデルはもとより、組織・業務プロセス、企業文化・風土までも変革し、競争上の優位性を確立しようとする取組みである。
- デジタルガバナンス・コードは、経済産業省が策定した指針で、経営者がDXに取り組むにあたって示すべきビジョンや戦略、体制整備、成果の評価等の望ましいあり方を示す。
- DX認定制度は、情報処理促進法に基づき、DX推進の準備が整った事業者を国が認定する制度である。
- デジタイゼーションは既存のやり方を保ったまま道具をデジタルに置き換える段階であり、デジタルトランスフォーメーションは提供価値や組織のあり方まで変えることを指す。
まちがえやすい点
- 紙の帳票をそのままスキャンして保存するだけで業務を変えない取組みは、単純な電子化であるデジタイゼーションにとどまり、DXではない。
- デジタルデバイドは情報技術を使える人と使えない人の間に生じる格差であり、変革の段階を表すデジタルトランスフォーメーションとは別である。
- DX認定制度は事業者を対象とする制度であり、個人のIT資格認定やプライバシーマーク、ISMSの認証とは異なる。
- デジタルガバナンス・コードは上場・非上場や企業規模を問わず参照される指針であり、プログラムコードの命名規則ではない。
データ活用・エンタープライズサーチと人材
エンタープライズサーチ、データガバナンス、データサイエンティスト、EBPMなど、データを経営や政策に生かす仕組みと人材を扱う。
要点
- エンタープライズサーチは、組織内に分散する多様な情報資産を横断的に検索できるようにする仕組みで、業務効率化やナレッジマネジメントの促進に貢献する。
- データガバナンスは、企業が保有するデータの品質・整合性・セキュリティ・利活用ルール等を全社的な方針のもとで統制する取り組みで、データに基づく意思決定の基盤を築く。
- データサイエンティストは、大量のデータを統計や機械学習の手法で分析し、経営や業務に役立つ知見を導き出す専門人材である。
- EBPMは、統計や調査などの客観的な証拠(エビデンス)に基づいて政策を立案する考え方である。
まちがえやすい点
- エンタープライズサーチは組織内の情報を横断検索する社内の仕組みであり、一般的な検索エンジンの別名とは別である。
- EBPMは客観的な証拠に基づく政策立案であり、経験・勘のみや人気投票のみ、前例の無条件踏襲とは異なる。
- データガバナンスは全社的な方針のもとでデータを統制する体制であり、1部署がデータを独占して共有を禁止する体制ではない。
業務プロセス
業務プロセスの可視化と再設計
BPR・BPOの違いと、DFD・BPMN・As-Is/To-Be分析・ギャップ分析など、業務を可視化し課題を見つける手法を扱う。
要点
- BPRは、既存の業務プロセスや組織構造を前提とせず、業務の目的に立ち返って根本的に見直し、抜本的に再設計することで大幅な効率化や競争力強化を図る取組みである。
- BPOはビジネスプロセスアウトソーシングの略で、業務を外部に委託することを指す。
- DFDは、業務やシステムにおけるデータの流れを処理・データストア・外部実体・データフローという記号で図式化する業務モデリングの手法である。
- BPMNは、業務の流れをイベント・アクティビティ・分岐などの記号で標準的に表記する記法であり、業務プロセスを可視化・標準化する。
- As-Is/To-Be分析は、現状の姿と目指すべき将来像をそれぞれ明確化し、両者の比較を通じて課題やシステム化の方向性を導き出す分析手法である。
- ギャップ分析は、あるべき姿と業務・システムの現状とを比較して差異を明確にし、解決すべき課題やシステム化で対応すべき範囲を具体化する手法である。
まちがえやすい点
- BPRは既存の手順を前提とせず業務プロセスを根本から設計し直す活動であり、既存手順を前提とした部分的な効率化の積み重ねとは異なる。
- BPRは業務の設計し直し、BPOは外部への委託であり、災害時などに事業を続けるための計画であるBCPではない。
- As-Is/To-Be分析は現状と将来像を比べる手法であり、財務諸表の残高差額のみを分析する会計手法とは別である。
業務の自動化・電子化・集約の仕組み
ワークフロー、RPA、ローコード開発、チャットボット、グループウェア、ペーパーレス化、シェアードサービスなど業務を効率化する仕組みを扱う。
要点
- ワークフローシステムは、稟議書の回付や経費申請の承認といった定型的な業務の流れを電子化し、処理状況の可視化や承認プロセスの迅速化を実現する仕組みである。
- RPAは、人が行っていたパソコン上の定型的な事務作業をソフトウェアロボットが代行する技術であり、金融機関では口座開設事務や振込データの照合等に活用される。
- ローコード・ノーコード開発は、ソースコードの記述を最小限または不要にしてアプリケーションを開発でき、業務部門の担当者(シチズンデベロッパー)が自ら業務アプリを作れる手法である。
- ペーパーレス化は紙文書を電子データへ置き換える取り組みで、保管コストの削減や検索・共有の効率化等の利点があるが、電磁的記録での保存が認められる文書とそうでない文書がある。
- チャットボットは、利用者の質問に対してプログラムが自動で対話形式の応答を返す仕組みで、問い合わせ対応を効率化し、AIを組み合わせると柔軟な会話が可能になる。
- グループウェアは、電子メールやスケジュール共有、電子掲示板、文書共有などの機能を通じて、組織内の情報共有やコミュニケーション、共同作業を支援するソフトウェアの総称である。
- シェアードサービスは、経理・人事・総務等の間接業務をグループ内で集約して専門組織が一括処理する仕組みで、業務プロセスの標準化やスケールメリットによるコスト削減が期待される。
- 共同利用型システムは、同一業界の複数企業が共通業務のためのシステムを共同で構築・利用する仕組みで、投資負担を分担でき業界横断的な業務プロセスの標準化にも寄与する。
- BYODは、従業員が個人所有のスマートフォンやパソコンなどを、会社の業務にも使うこと。
- M2Mは、機器どうしが人を介さずにネットワークで通信し、遠隔監視や制御などを自動で行う仕組み。
- ブログは、個人や組織が日記や記事のような形式で情報を時系列に公開する、コメントも付けられるWebサイト。
- ライフログは、日々の行動や移動、睡眠、健康状態などを、端末やアプリで継続的に記録・蓄積したデータ。
- 情報銀行は、個人から預かったデータを本人の同意の範囲で管理し、条件に合う事業者に提供して、その便益を本人に還元する事業。
- PDSは、個人が自分に関するデータを自らの管理下に蓄積し、他者への提供の可否や範囲を自分で決められる仕組み。
まちがえやすい点
- シェアードサービスは間接業務をグループ内で集約する仕組みであり、シェアリングエコノミーの別名や同一オフィスビルへの入居を指すものとは異なる。
- ペーパーレス化は電子化の取り組みであり、法令上の保存義務が一律に免除される制度とは異なる。
- ローコード・ノーコード開発は業務部門の担当者も使える手法であり、専門プログラマ限定の開発環境ではない。
- 共同利用型システムは複数企業が共同で構築・利用する仕組みであり、単一企業専用のオンプレミスシステムとは別である。
ソリューションビジネス
クラウドサービスの提供形態と戦略
SaaS・PaaS・IaaS・ASPの違い、パブリック・プライベート・ハイブリッド・マルチクラウドの形態、クラウドファーストの方針を扱う。
要点
- SaaSは、ソフトウェアをインストールして所有するのではなく、ネットワークを通じて必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるクラウドサービスの提供形態である。
- PaaSは、アプリケーション開発・実行に必要なOSやミドルウェア等のプラットフォームをサービスとして提供するクラウドの形態で、利用者はインフラ管理の負担なく開発に集中できる。
- IaaSは、サーバ・ストレージ・ネットワークといったインフラ部分をサービスとして提供するクラウドの形態で、利用者はその上のOSやミドルウェア、アプリケーションを自由に選択・構築できる。
- パブリッククラウドは不特定多数が共用する形態、プライベートクラウドは特定の組織専用の形態、ハイブリッドクラウドは両者を組み合わせて用途に応じて使い分ける形態である。
- マルチクラウドは、複数の異なるクラウド事業者のサービスを組み合わせて利用する形態で、ベンダーロックインの回避や、得意分野に応じた使い分けによる最適化を狙う。
- ASPは、インターネットなどのネットワークを通じて業務用ソフトウェアの機能を利用者に提供する事業者、またはそのサービス形態を指す。
- クラウドサービスの活用は、自社でサーバ等を保有せず必要な機能を必要な分だけ利用できるため、初期投資の抑制やシステム規模の柔軟な拡張・縮小が可能となる。
- クラウドファーストは、新規・更新のシステム導入にあたり、まずクラウドサービスの活用可能性を優先的に検討する方針である。
- ホスティングサービスは、事業者が所有するサーバの全体または一部を借り、Webサイトやメールなどの運用に使うサービス。
- ハウジングサービスは、利用者が所有するサーバなどの機器を事業者のデータセンタに設置し、電源や回線などの設備環境を借りて運用するサービス。
- マネージドサービスは、システムの運用や監視、障害対応などの管理業務を、事業者が利用者に代わって継続的に行うサービス。
まちがえやすい点
- PaaSはプラットフォームを提供する形態であり、インフラのみを提供しOS等は利用者が用意するIaaSとは異なる。
- マルチクラウドは複数の異なる事業者のサービスを組み合わせる形態であり、単一事業者の複数データセンターの利用とは別である。
- クラウドの活用は有力な選択肢だが、セキュリティ対策の責任が不要になるという考え方とは異なる。
- 共用するのがパブリッククラウド、特定の組織専用がプライベートクラウドであり、この定義を入れ替えた説明とは異なる。
システム活用促進・評価
システムの活用促進とレガシー刷新
システム導入後の活用促進と評価、レガシーシステムの問題、2025年の崖、マイグレーションとモダナイゼーションの違いを扱う。
要点
- 情報システムの活用促進・評価は、導入後も利用状況の把握や利用者教育、目的の達成状況の測定を継続的に行い、必要に応じて改善につなげていく取組みである。
- 2025年の崖は、経済産業省のDXレポートで示された概念で、老朽化・複雑化したレガシーシステムを放置した場合に2025年以降に生じうるとされた経済損失(2018年公表のDXレポートによる指摘)やDX推進の停滞リスクを警告するものである。
- マイグレーションは、既存のシステムやデータを新しいハードウェア・OS・プラットフォーム等の環境へ移行する取り組みであり、オンプレミスからクラウドへの移行等の場面で用いられる。
- モダナイゼーションは、既存システムが持つ資産やロジックを活かしながら、最新の技術基盤やアーキテクチャへ作り替える取り組みである。
- ゲーミフィケーションは、ポイントやランキングなどゲームの要素を、ゲーム以外の分野に取り入れて、利用者の意欲や継続利用を高める手法。
- デジタルディバイドは、情報通信技術を使いこなせる人とそうでない人との間に、年齢・地域・所得などを背景として生じる格差。
- メンテナンスコストは、情報システムの稼働後に、不具合の修正や機能改善、制度変更への対応などのために継続的にかかる費用。
- 利用者満足度調査は、システムの利用者にアンケートや聞き取りを行い、使いやすさや機能への評価・要望を把握する調査。
- システムライフサイクルは、情報システムの企画から開発、運用、保守を経て、廃棄や更改に至るまでの一連の過程。
- レガシーシステムの廃棄・刷新は、老朽化・複雑化して保守が難しくなった既存システムを、使用をやめたり新しいものに置き換えたりすること。
まちがえやすい点
- 活用促進・評価は導入後も継続して行うものであり、導入時点で完了とみなす考え方や、コストの多寡だけで評価する考え方とは異なる。
- 2025年の崖はレガシーシステムを放置した場合のリスクを示す概念であり、最新のクラウド技術で構築されたシステムを指すものとは異なる。
- マイグレーションは既存のシステムやデータを新しい環境へ移行することであり、アンケート調査のみや人事異動のみを指すものとは異なる。
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この論点の問題は、アプリで解けます
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出典と作り方
この読み物は、IPA「ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5」の中分類の順に、アプリ「ITウカール」の収録問題の解説をもとにアプリ製薬が作成したものです。公式の文章の転載ではありません。問題文・選択肢は載せていません。